2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

:13.オレンジシロップの底

気がつけば、すでに夕刻を過ぎていました。 きっと、あのガラス張りの通路から外を見渡せば、オレンジのシロップの底にインクみたいな青が乗った甘いカクテルのような色合いが、東京の街並みを見事に染め上げているにちがいない、と想像しました。 タカガキ…

:12.つめたさの底

落とし穴。 清美ちゃん。が、先日電話で言ったことばをふと思い出しました。 なにか裏があるのかもしれない。と。 いいえ、裏もなにも、わたしの無能さを暴露して、ただ用無しになる。 ただそれだけの決着なのかもしれない。と。 いざ、ここを去るときが来た…

:11.ビールと発泡酒

その後すぐ、タカガキさんが出社されました。やっぱり、昨日わたしがなんてさわやかな人なのだろうと思ったのは、まちがいではありませんでした。颯爽とあらわれ、よく通るのだけれど耳当たりの良い声で挨拶をし、きびきびとなさっていました。 ぼんやりとそ…

:10.冷たい光

わたしの、あの会社での『経歴』は、『インド人エンジニア』が来るまでの、ほんのわずかな期間に限られているのかもしれない。 翌朝、なぜかそんな気がしました。 来週早々インド人の開発者がやって来る、通訳としてわたしが紹介される、そして一言二言話し…

:9.セイコウイ

その日の夜、さきほどもお話しした清美ちゃんという短大時代の友人に、ひさしぶりに電話をしてみました。わたし、じぶんから電話をしたり、メールをしたりなんてことをするの、あまりないことなのですけれど、その日は、なぜか、だれかと話をしたかったので…

:8.ぬらりひょん

イトウさんは、なにも言わず、ただ、にっと笑ってみせました。 なにか言うべきなのかもしれなかったのですが、なにを言えばいいのか分からず、わたしも、ただ笑ってみせました。 つづいて課長は、「おおい、タカガキくん」と声をかけました。 すると、イトウ…

:7.つくりもののような

さいしょ、インドの人が来る、と聞いたときは、いったいなんのことか分かりませんでした。 無知なわたしは、この会社でカレーでも作るのかしら? なんて思ったものです。 おかしいですよね。 でも、すぐ後に知ったことですが、インドはIT先進国なんですね…

:6.七三

翌朝。電話は、ありませんでした。だれからも。 わたしは、身支度をし、言われた時間よりもだいぶ余裕を持って、家を出ました。そのとき、はじめて通勤ラッシュといわれる時間帯に山手線に乗りました。もう乗れない、というくらいの満員状態なのに、それでも…

:5.パンチと笑顔と悪い夢

わたしにとってはじめてのデスクワーク。その勤務先は、いつかはと望んでいた、誰もが知っているような大企業といって差し支えないところでした。 テレビのコマーシャルなんかでも見かけるような、いわゆる、大手電機メーカーです。しかも、おどろいたことに…