:2.淡々とした決意
「わかりました」と、婦人がしっかりと、言った。
「お話します。どうか、こんなわたしの話を、聞いてください」
わたしは、婦人の顔を見た。そこには、自棄になったような勢いや捨て鉢さなどはなく、ただ、淡々とした決意が、あるように思えた。
はい、と、わたしは応えた。「お伺いします」
婦人がこっくりとうなづいたのを受けて、わたしは言った。
「あなたがお話になりたいことを、ありのままに、お話ください。
「すべてを語る必要はありません。隠したいことは隠したっていい。
「ただし、うそだけは語らないでください。偽りのお話をしていただいても、できることは、なにもありません。
「あなたの、忘れたい過去、というものを、できるだけ、ありのままに、うそ偽りなく、お話ください。
「そこからです。そこから探るしかないのです。わたしが、あなたに助言してあげられることを――」
婦人は、わかっています、とでも言いたいかのように、軽く唇をかんで、うなづいた。
そして、なんの合図もなく、婦人の話が、音楽のように、しずかにはじまったのだった。